Ⅶo'z Log

ゆるーくゲームやアニメ、漫画といったサブカルを日常と一緒に伝えていきます

【Review】DQNなヤンキーが美術の世界へ。"ブルーピリオド"の魅力を語る

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かっこいいもんは世界に無限にある。
―――俺がそれに気づけなかっただけなんだ。

どうも。ブルーピリオドの3巻から一部抜粋してお送りしましたnaw0です。

今回は趣旨を変えて、ブルーピリオドという漫画の紹介と感想を綴っていけたらと思います。

この前作者の山口つばさ先生が投降した内容がバズりましたね。もっと色々な方に知って欲しいですし、もっと売れてほしいですねー!さて、いきなり本題には入らず、ちょっとだけ作品との出会いだけお話させてください。

ボク自身のブルーピリオドとの出会いは、ちょうど2巻が発売されたくらいでした。なので1年と少し前くらいの話になります。

打ち合わせという名の飲み会でそれはもうめちゃめちゃ仕事したテッペン近い帰りの電車内の交通広告を見たのがきっかけです。強く惹かれたのを記憶に覚えています。1巻の表紙でデザインされていたのですが、カッコ良さに一目惚れしました。当時これを入れてくれた広告代理店には感謝しかないですね。出会いってホントどこであるか分からない!

そんな広告で一気に惹かれたボクはケイネス・エルメロイの聖遺物を盗んで、すぐに日本へ発ったウェイバー・ベルベットの如く、速攻でAmazonで調べたんだけど、1巻は売り切れていて既に在庫が無かった。(この時点で読みたくて仕方なかった。それにどうしても紙の本で読みたかった)そして、目に入ってきた評価見てビビったね。☆5近い。SSR確定。私の目に狂いはなかった。載っている評価が全てではないが、…最早賽は投げられた。Point of No Reternというわけだ。

敵は万夫不当のAmazon(在庫なし)。相手にとって不足なし。いざ益荒男(スマホタブレット)たちよ。惚れた漫画に、我らが覇道を示そうぞ!

と意気込み、即調べたのは紀伊国屋書店

…あるやん!

流石は紀伊国屋。イタガキ死すともオーガ最強神話爆誕。 マジで欲しい本買うなら紀伊国屋は最強だな!敢えて言うぞ、覚えておくがいい!!

本はリアル店舗で買うのが信条な僕は、新宿本店で取り置き。翌日に「検閲じゃぁぁぁあ!」と言わんばかりの勢いで紀伊国屋書店の新宿本店へ突貫。

2巻と一緒にお買い上げ。ホクホク顔で帰路につき、帰宅後に愛用のチェアーで読んだが最後。読破まで一瞬。

いやぁ、熱かった。久々に熱中して読んだよ…。ここまで熱い作品だったとは…!ってね!!

そんな、ボクを滾らたブルーピリオド。前置きが若干長くなりましたが、作品紹介ということで大きく8つに分けてお話していきます。

ブルーピリオドとは?

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ブルーピリオドは、2017.06よりアフタヌーンで連載されているコミックス。単行本で5巻まで発売されています。(2019.08.16現在)

あらすじを紹介します。

成績優秀かつスクールカースト上位の充実した毎日を送りつつ、どこか空虚な焦燥感を感じて生きる高校生・矢口八虎(やぐち やとら)。

彼はそんなある日、一枚の絵に心奪われます。

その衝撃は八虎を駆り立て、見た目は美しくも残酷なまでに厳しい美術の世界へ身を投じていくことになるのです。美術のノウハウやうんちく満載、美大を目指して青春を燃やすスポコン受験物語。八虎と彼の仲間たちの戦いを描く正に笑いあり、涙ありの美術系青春漫画となっております。※公式サイトより1部抜粋。

なぜここまで惹かれるのか。ブルーピリオドの魅力。

これは自分がまったく美術に触れていなかったからだけど、主人公と一緒に知っていくことで美術の世界が楽しくなっていくこと。これがまさに惹かれる理由になる。

美術は多くの人にとっては、ほんの少しの教養の通過点になるだけだと思うんです。と、言うのも…、圧倒的に苦手な人が多いし、まぁ学生時代にガチになっていた人ってクラスに1人いるかいないかだと思うんですよね。あとはただ、手を抜いていい時間と考えるくらいで、あくまで少しの教養。あとは世界史や日本史を通じて歴史と勉学を起点とした共感になることがほとんどだと思うんですよね。だから僕もへぇ、スゴイで終わったわけですが。

でもさ、ブルーピリオドの場合は多くの人にとっての美術の知らないを知るきっかけにしてくれる。勉学って観点じゃなくて、興味付けから…ね。だから彼と一緒に知る機会が生まれるし、彼が進んでいく道を応援したくなる。作品がもっと知りたくなるし、八虎がどうなっていくのか?がもっと知りたくなる。その応援した気持ちが実際に結び付いたときに感動が生まれる。そして、いつの間にかボクみたいに美術館を巡ることも楽しくなる。美術を通して新しい世界をこうして発見できるのがブルーピリオドの魅力だと思う。

作者

作者は山口つばささん。作者ご自身が東京藝術大学(日本の美大で最難関)を現役で合格しご卒業されています。

彼女はアフタヌーン四季賞2014年夏で佳作受賞し、2016年に新海誠監督の作品『彼女と彼女の猫』のコミカライズでデビューしました。その後、2017年6月からアフタヌーンで『ブルーピリオド』を連載しているという経歴です。 

ボク自身、美大を出ている方が描いている漫画に出会ったことなかったのでまずここで斬新でした。というより驚愕のほうが実際には強かったですね。サイン会でお会いし、お話したことが一回だけありますが、本人は活発な感じが良く感じられました。芸術を志としている人のイメージが変わった気がしました。ふふん、その時は八虎のイラスト描いてもらって、サインまでもらったんだぜ―!いいだろー!!(まぁ、そういう趣旨のイベントだったんですが(笑))

実際Twitterを観ていると美術を起点にマルチに活動されていて、芸術家の凄さを実感します。

主人公の八虎ってどんな人?

八虎はそうですねー…、言ってしまえば天才肌なDQNでしょうか。高校生ですけど、タバコ吸うし、酒も飲むし、同じような不良と絡むわ…と、羅列すると好印象ではないですね(苦笑)。

ただ、彼は人一倍努力家で、ゲームで言うステータスを上げる感覚で勉学をきちんとこなし結果も出すという二面性を持つ男の子なんです。加えて、彼は周りの空気を感じることに敏感で、自らを律し、空気を一定にすることへ徹するタイプでもあります。

また、ある種の感性の持ち主でオールしてラーメン屋から出てきた夜明けの渋谷を"青い"と言ったりとしていて独特な世界観を持っているとも見受けられる発言もあったりと魅力たっぷりな男の子。それが矢口八虎くんなんです。

また、彼は器用で、何をやっても要領よくこなせてしまうタイプが特徴です。…こういう人はボクの周りにもいます。ちょっと脱線しますが、そんな天才や秀才と呼ばれる人間は頭の出来が元から良いというわけではないんじゃないかなと自分は思っています。なぜならば不完全だからこそ人間だからです。では、なぜ不完全な人間のなかで八虎のような秀才と呼ばれる人間が存在するのか?

多分それは不完全故の"苦手意識"を埋めようとする行動量の差。
できる人ってのは実は誰よりも行動・実践しているんです(少なくともボクの周りは)。故に出来ない人間というのは、前者と比較した場合「分からない」「出来ない」「やってない」のパターンがほとんど。

そこに差が出るわけで。

やらないから分からないし、出来ないわけですね。これはなんでもそう。そしてそれがきっちりできている八虎は、オールマイティーだけどそれゆえに特筆したものがないんです。そんな特筆したものがないという彼が、表現がすべてを表す"絵画"という答えがないものに出会うわけです。絵の表現は才能という言葉で片づけてしまえば簡単な話ですが、あらかじめゴール、要するに答えのないものを自ら作り出すこの在り方が彼の心臓を動かすことになるわけです。(ちなみに持論ですが、努力を突き詰めたものが秀才で、それにかまけないのが天才だと思っています。 ← 調べたらこれ大体あってるみたい)

そして、何よりの決め手が最後までやり切るという彼の在り方が芸術家としての一歩を大成させます。

八虎の美術への出会い方と仲間との触れ合いがブルー(青春)であり、ピリオド(芸術家)としてのゴールに向かって突き進んでいく様が僕にはとても眩しく感じられたのでした。

矢口八虎は秀才であっても天才ではない。

そう、彼は勉学をはじめとして、努力で実力を身に着けた秀才であり、決して天才ではありません。特にネックとなる美術に関しては素人同然です。まっさらだからこそ映るすべてが糧ではありましたが、この作品には絵に情熱をかけてきた秀才と、天賦といっていいほどの天才が登場し彼にも焦りが生じます。

最初は才能に嫉妬した八虎でしたが、ステークホルダーすべての在り方を吸収していきます。無ければ付けるという考え方と、最後まで投げ出さず必ずアウトプットさせるという完結型の精神が彼を大きく成長させます。

ブルーピリオドを4つの時期に分解する。

今のところ、ブルーピリオドは展開を大きく4つに分かれていますので、順を追って話していきますね。ただ、話しているとここら辺はめちゃ長いので邂逅だけは長く綴りまして中核は全部話しちゃいそうなのでなるべく薄く話していきます。

【1巻】邂逅期(美術との出会い) 

八虎の心に芸術を印象付けさせたのは、美術室でのこと。そこで人の肌が緑で表現された絵画に出会います。この絵が印象に残った彼は、後日絵を描いた生徒に出会います。

それが後に彼の先輩となる森先輩です。

彼はこの時期、選択芸術で美術を選択していました。彼はあくまで美術は「オタク」か「サボり」の人種しか選ばないものと考えており、サボりつつもこなす程度のものとしか考えていなかったのです。そんな中で、森先輩と話す機会を得て、以前自分が感じた朝の渋谷が青く見えたことを話します。

"あなたが青く見えるなら、うさぎもりんごの体も青くていいんだよ"

森先輩のこの一言で八虎は自分(の意見)を出すことは恥ずべきことではないと思うようになるのです。そして、後日。彼は美術の授業で出された課題である"自分の好きな風景"という課題で、朝の渋谷の風景を描きます。

結果的に部分的には成功したものの自分の思い描く内容を出すことは難しく、景色を描くのにも時間が足りず思い描く内容にはできませんでした。それは、担当教員が年を召していらっしゃったことから、それに応じて好みそうな内容をと考えていた八虎にとって、作品を完成させるという観点から考えれば圧倒的に遅すぎたのです。

しかし、描いた風景は色だけはしっかり自分の思い描いた内調になっており、彼の友人たちが”青い渋谷”に気づいてくれたのです。空気を読むことなく素直な自分を出した作品を経て友人と"対話(会話)"ができたことに初めてきちんと話せたという感動は八虎を美術にのめり込んでいかせるきっかけになります。

上記の出来事を契機に、彼は友人である鮎川龍二(通称:ユカ)に美術部の手伝いとして召喚されます。そこには以前に美術室で話した森先輩と美術部の顧問がいたわけです。美術部の顧問は美術の担当教員と同一人物であり、 そこで自分の描いた絵のフィードバックを受けることになりました。美術に対して、好きの感情を表に出した八虎でしたがそれでも好きなことは趣味でよいと自分の中で決めており美術室を後にします。

しかし、一度得た感動は彼の中で大きいものでした。授業中であっても、自宅での勉強途中にも。常に彼の日常には絵がちらつき始めるようになるのです。そんな衝撃に逆らえなかった彼は将来に葛藤しながらも、スケッチブックやノートに自分の見た景色を描くことが止められず、ついには美術室へ赴きます。前回同様、絵のフィードバックが欲しかったのです。

好きということをやり続けることというのは、実に苦しいことです。努力をし続け、アウトプットを出し続けるというのは実に大変なことです。それが生活に、将来に結び付くならば当然です。彼もそんなことを思う若者の一人でした。

しかしそんなときに、「好きなことをする努力家は最強なんですよ!」と、言われることで彼の呪縛は解き放たれました。それは、今まで何事も努力することで力を身に着けてきた八虎にとって救いともいえる一言でした。

八虎は決心し、美術部へ入部を決めます。親の望む少し高いレールを走ることをやめ、自分で選んだレールを走りだした瞬間だったのです。

【2巻】転換期(美術部入部)

その名の通り、彼は大きく転換します。中でも心揺さぶられたのは2巻の序盤です。八虎は美術部へ入部し、絵の道へ突き進むことになります。

しかし、彼の実家の経済状況はよいものではなく、とても私大に行ける状況ではありませんでした。彼の父親は事業で失敗しており、母親はそれを目の当たりにしていたことから、子供には安定した生活を送ってほしいという強い想いがあったのです。そのため、彼に残された道は東京藝術大学、すなわち日本で唯一存在する美術系の最難関である国公立大しか道がなかったのです。

そんななか、自らの道を拓くために彼は行動を起こします。夕食時に美大へ進むメリットを話しつつもうまく事を進められなかった八虎は後日、母親に1枚の絵を贈るのです。

描かれていたのは、キッチンに立つ母親の姿でした。

矢虎は母親に対して正面から、「その絵を描くにあたり、どれだけ家族のことを想ってくれていたのか、どれだけ家族にしか目が行っていないのかということに気づいた」と伝えるのです。

母親は事前に彼の部屋で大量に描いた絵を目の当たりにしていたこともあり、自分の説得のために描いた絵だと思っていましたが、彼の気持ちが、想いが伝わることで、美大受験という入口に立つことができるのでした。

壁を越えた彼は美大の予備校に通うことになります。そこでの出会いと経験が彼を大きく成長させることになるのです。このエピソードは読みながらボロボロ泣きました。FF10をやり終わったときに父親と話したくなるのと同じ感覚でした。

 

【3巻 - 5巻の¾まで】葛藤 → 行動期(予備校編)

この辺りから八虎の受験に向けた葛藤が始まります。美術に人生を賭けてきた同級生たちと切磋琢磨しながら、技術を習得し熱を乗せてひたすらに絵へ向けていく…、それがこの時期です。

自分と同年代の人間たちの絵が一同に揃い、受験という過酷な戦争へ足を踏み入れた若鳥たちがまだ数歩しか歩けていない八虎に非情なまでに現実を見せてきます。

しかし、彼は前述した話した通りの努力をし続ける秀才型。しかもアウトプットを出し続ける完結がきちんとできる精神を持っています。

出会う友人。導き後押ししてくれる担任。そして学友と顧問。これらを上手く作用させ、自らの作品を生み出す力を養っていきます。そして、その中で見つけられたのが構図の捉え方の上手さでした。

予備校の担任である大葉先生に、構図の捉え方を長所としてアドバイスされた八虎はこれをフックに長所を伸ばしながら弱点を少しずつ克服し、着実に実力をつけていくという訳です。

【5巻ラスト】受験手前 ~ 受験期

ついに受験。藝大の一次試験。

お題は"自画像"

全てをぶつける彼の挑戦が幕を開けるのです。続きはありますが、あえてこの辺りでやめときますね。これラストまで突っ走るとちょっとやりすぎてしまうので(笑)。

個性豊かなキャラクター達

ブルーピリオドは恐ろしくキャラが濃いです。個人的にズッガーンときた人たちを紹介します。

・鮎川龍二(あゆかわ・りゅうじ)

「悔しいと思うならまだ戦えるね」

通称:ユカ。八虎の友人の一人で、男の娘キャラです。
八虎とは同学年の高校2年生。(作中で3年生に)

可愛らしい見た目とは打って変わって、現実を見る目と人の内面を見抜く力がずば抜けていて、八虎の痛いところをついてきたりとストーリーの要となってくる娘です。

美術部に在籍しており、専門は日本画

・森先輩

「あなたが青くみえるなら、りんごもうさぎの体も青くていいんだよ」

作中では八虎の一つ上の先輩で高校3年生。
八虎が美術にのめり込んでいったきっかけその人。

体は小さいが、芯と軸が固く八虎にとって尊敬できる先輩。八虎に自由の翼を授けた人。専門は油絵。

・佐伯(さえき)先生

「美術は面白いですよ。自分に素直な人ほど強い。文字じゃない言語だから。」

美術部の顧問で八虎にとっては恩師。
八虎の美術部への入部を後押しした張本人。

名言の宝庫。
前を向かせ続けられる八虎を後押しし続けてくれる人物。

ブルーピリオドの中で代表的な人格者で教育者。

・橋田悠(はしだ・はるか)

「いい画材だから受かるわけやない。良い絵だから受かる。藝大受験は究極の表現実力主義。はぁ…コウフンするわぁ…」

八虎が藝大入学対策のため通うことにした予備校の同級生。学校は違うが、同学年。

美術に対しても、自分の思考すらも常にポジティブで作中の変態の代名詞を上げるとすれば彼。

・髙橋世田介(たかはし・よたすけ)

「予備校はいい絵を教えるところじゃない。受かる絵を教えるところなんだよ。」

作中の天才の代名詞。

悠同様に予備校の同級生。

飛び抜けたセンスを持っており、登場時の画力に八虎が自分を凡人と思い知らせてしまった天才。しかし、美術に特化するあまり、コミュニケーション能力には乏しい繊細な芸術家肌。

・大葉(おおば)先生

「まずは"自分が何を好きか知ること"。そこから始めましょ。」

予備校の教師で八虎や悠の担任。
生徒の才能を伸ばす力に溢れており、生徒とはサシで向き合っている。

出す課題も非常に富んでいるが故に、生徒からは滅茶苦茶という評価もあるが非常に有能な教師。八虎にとっては、藝大受験まで指導してくれた恩師。

物語を飾る屈指の名言

この作品はとにかく、心に来る言葉が多すぎる。
明るく笑顔にするものもあれば、時に暗くズシンとくるものもある。

いくつか紹介しよう。

なら一体 この感動は誰のものだ。なんでこんなに大声出してんの? 他人の努力の結果で酒飲むなよ お前のことじゃないだろ(矢口八虎)

 ちなみにこれ、1巻でボクが最も衝撃を受けた言葉。速攻で引き込まれたし胸が痛かった。

好きなものを好きっていうのって、怖いんだな…。(矢口八虎)

そう、怖い。だって口にしたら形にすることを迫られてしまう。

好きなことは趣味でいい これは大人の発想だと思いますよ。誰に教わったのか知りませんが頑張れない子は好きなことがない子でしたよ。好きなことに人生の一番大きなウエイトを置くのって普通のことじゃないでしょうか?(佐伯先生)

とんでもなくド正論。ボクも今好きなこと趣味にして、自分が好きな趣味が仕事になってる。65-70迄働くんだから好きなことやるのは当然だって今なら思える。

ここにあるモンみーんな誰かが考えて作ってんねやろ?そしたらコンビニも美術館みたいなもんやん。(橋田悠)

その考えはなかった。そうか、日常すら誰かの作った芸術なのだと。

俺の絵で全員殺す。そのためならなんでもする。(矢口八虎)

ゾクッと来た。

な? 言葉で脳天を突き刺されたみたいな衝撃だろ?

■最後に

振り返ってみるとなんて面白い作品なんだと思うわけですよ。

作品は美術という題材で、難しいのかなと思ったけど全然そんなことなかった。美術は高校で世界史Bを受験科目に選んだ時から、なんとなく偉人の描いた絵ってのはスゴイものだというのは感じていた。でも難しいって感性は多分無くなってなかった。

そんな感性を持ったまま世界史のテキスト片手に大学生の時に、オランダでレンブラントの夜警を見た時の衝撃は忘れられない。ただ、あれは習ったものがそこにあるという感覚だった。迫力に圧倒され、理解はできなかったが今見たら絶対に違うと思う。

間違いなく、筆致や色遣い、どんなことを思って描いたのかということに焦点が行ってしまうと思う。

それはブルーピリオドのおかげだと思う。いま、自分の趣味となってきつつある美術館巡りは様々な作家に触れ合う機会をもらっている。

つい先日も、松方コレクションに行ってきたがモネの睡蓮のダイナミックさや色遣い、彼の歩んできた軌跡を脳内で思い描いていると自然に何分もそこで足を止めてしまうのだ。それは学生の頃にはなかった感性だ。ボク自身は絵についての努力をしてこなかった人間だし、美術に興味を持つなんてことは考えられなかったが、こうしてきっかけを与えられた。

きっかけなんて何でもいい。必要なのはほんの少しの好奇心なんだと思う。美術は本当に素晴らしい。素直な気持ちを伝えられるし、描かれた絵画を見て"知"を育ませることができるんだから。

少しでも気になってみたら読んでみてほしい。
きっとそこには自分の世界が広がるきっかけができるはずだから。